増刊 かわらや日記

巫夏希の日常

英雄譚なんて、僕には似合わない。第34話①

 リニックもまた、一人白の空間に居た。
 そして、目の前には浮かんでいる存在が一人。
「……やれやれ、ついに『剣』の封印を解いてしまったというわけか」
「あの、あなたは……?」
「僕? 僕はね……この世界、次元、存在全てを作った『神』、その代理人とでも言えば良いかな。もっとも、彼女は力を使いすぎてね。今は少しお休みさせているんだ」
「お休み? 神の代理人?」
 いったい全体、何を言っているのかさっぱり分からなかった。
 さらに、彼は話を続ける。
「僕の名前は、……いいや、名前すらも忘れてしまった。今や、地位で呼ばれることが殆どだからね。僕は影に隠れた神、その名も影神(えいしん)。一般的に神と揶揄されているガラムドはただの管理者さ。神からある一定の権利を委譲しただけに過ぎない。つまり、彼女も管理される立場であり、いつ排除されてもおかしくない。そして、その管理者の上には僕たち影神と真の神が居て、管理者の下には管理者を補佐する役割として眷属を置いた。それで世界はしっかりと回っていくはず、だった」
「だった?」
「人間はあまりにも愚かな行為を連続したのだよ。そうして一度、人間を滅ぼした。正確には、人間に選択の余地を与えた。滅びるか、種としての人類を残すために僅かな人間だけを残すか、と。結果は後者を選択した。当然と言えば、当然の結果だ」
 一息。
「一度、人間が地上から居なくなった世界は、人間以外の動物の楽園になった。動物は人間以上の知能を持たない。だから記憶エネルギーを使われることはない。まあ、そもそもあの時点で記憶エネルギーに気づく人間も居なかったわけだから、別に問題なかった訳だけれどね。でも、そこで我が儘を言い出した存在が居た」
「それは……ガラムド?」
「ご明察。ガラムドは再び人間を作ったのさ。人間を作れば、また平和な世界を送ることが出来る。実際は、管理に暇を弄んでいたんじゃあないかな。それについてはあまり考えないけれど、ともかく僕は肯定することにした。もし今度こそ人間がだめな世界を作ったらそのときは人間を滅ぼそうという判断の下、地球に自衛機能を齎した」
「それがメタモルフォーズだって言うんですか?」
「君は話が分かるようで助かるよ。そうだ、その通りだ。メタモルフォーズは地球の自衛機能を持っていた。つまり、地球に何かあったらメタモルフォーズが攻撃をする。そうして地球に自衛機能を持たせることにした、というわけさ」
「でも、偉大なる戦いが起きてしまった……」
「ああ、君たちはそう呼んでいるんだったね。僕にとってみれば愚かな争いだよ。人間は、とうとう記憶エネルギーの存在に気づいてしまった。まあ、メタモルフォーズも永遠に動ける訳では無い。記憶エネルギーの詰まったエキスを定期的に補充する必要があった。その為に生み出されたのが、知恵の木の実だ。それに、人間は気づいてしまった。気づいてしまったんだよ」