増刊 かわらや日記

巫夏希の日常

英雄譚なんて、僕には似合わない。第33話①

 メアリーは驚いていた。
 何故?
 何故、そこに剣が揃ってしまったのか?
 何故?
 何故、剣の同調の中心にリニックがいるのか?
「これは……いったいどういうこと?」
 メアリーは今の状況が理解できなかった。
「総帥!」
 状況を整理するために追いついてきたライトニングとレイニー。
 そして、その状況を直ぐに理解できたのは、ライトニングのみ。
「……これは、同調が始まった合図なの」
「同調……ですって?」
「シルフェの剣は、オリジナルフォーズの力を封印するためのものだったの。つまり、百年前に復活したオリジナルフォーズは完全な力を持ち合わせてはいなかったの」
「どういうことっ。それってつまり、」
「未だ、オリジナルフォーズは完全に倒されていない、ということなの。……あなたたちが百年前に、別の次元に封印したそれは、全くの偽物。本物は、もう一つ上の次元に眠っている」
 ごごごごご、と地面が唸る音が聞こえる。
 リニックの頭上に、真っ黒い穴が出現する。
「何よ、これ……。いったいどういうこと……!」
 メアリーの言葉にライトニングは答えない。ライトニングは、それどころかリニックの身体にしがみついた。
「ライトニング! あなた、いったい……」
「あなたも知りたいでしょう、この世界の、オリジナルフォーズの真実を! そして、予言の勇者、フル・ヤタクミと出会いたいでしょう!」
 今までの口調とは違うそれは、別人かとも思わせた。
 しかし、違う。
 それは大いに間違っていた。
 そして今は――彼女の指示に従うしか無い。そう思って、メアリーもしがみつく。
 慌てて、レイニーもしがみつく。
「待ちなさい!」
 双方からカラスミとオール・アイがやってくる。
 何とか彼女たちを追い払いたいところだが、ここで手を離してしまうと二度とリニックに出会えない気がする――不思議とそう思った彼女たちはそのまましがみつくだけだった。
カラスミ=ラハスティ! あなたもこの剣の真実を知りたいでしょう! ならば、しがみつきなさい、そのリニック・フィナンス……いいえ、剣の『器』に!」
「何ですって? あなたいったい何を」
 オール・アイは何とかリニックの足にしがみついた。
「いいえ、今は迷っている暇など無いわね!」
 カラスミも残っていた右足にしがみついて、それでも何とかリニックの身体は浮かび上がっていく。
 そして、リニックたちの身体は完全に消失した。