英雄譚なんて、僕には似合わない。第31話①
「問題はその地下にどうやって入るか、ということ。きっと軍も策を張り巡らせているに違いない。……だとすれば、どうすればいいか?」
「普通に考えれば、二手に分かれるのがベストだろうな」
言ったのはリニックだった。
「ええ、そう考えるのが普通でしょう。そこで、私たちは二手に分かれることにしたわ。私とリニックが地下にある祠に向かう。その扇動を、ライトニングとレイニー……あなたたちにお願いできるかしら?」
「出来るの。頑張るの」
「了解です!」
「ライトニングは祠に行かなくて良いのか?」
「剣に選ばれたのはあなたなのだから、必要なのはあなただけで十分よ」
「そんなもんなのか」
「そんなもんよ」
メアリーはある場所を指さす。
そこは、都市の中心部から少し離れた隧道だった。
「ここに地下トンネルの入り口がある。正確に言えば、地下鉄の入り口ね。ここから潜入して、隧道を経由して、地下の祠へ向かう。でも、地下への入り口は全て軍が警備しているでしょうね。このあたりをさらりと見た限りでも軍の人間がかなりの数居たし。けれど、意外と私たちには気づかれなかった」
「泳がされている可能性は?」
「無きにしも非ず、ね」
可能性としては有り得る、ということか。
リニックはそんなことを考えつつ、メアリーの話を聞いていた。
メアリーの話は続く。
「……なので、とにかく二人には派手にやって欲しい訳よ。勿論、捕まるわけにはいかないわよ? 捕まってもいいぐらいにドンパチやらかして、捕まってしまっては元も子もないわけだし」
「それぐらい、分かりますよ。……じゃあ、決行日はいつにしますか?」
「早いほうが良いわね。でも、明日なんていうのは準備が出来ていないし、無理だと思う。だから、次の満月の日の夜に……でもしましょうか。次の満月っていつ?」
「三日後なの」
ライトニングが即答する。
「じゃあ、それで行きましょう。三日後、私とリニックは地下のトンネルへ。ライトニングとレイニーは……好きに爆発なり何なりさせれば良い。ただし、善人を殺しちゃだめよ?」
「機能停止は?」
「許可します。必要に応じて」
許可しちゃうのか、とリニックはそう思った。
そして三日後、作戦の決行をするべく今日、僕たちは別れるのだった。