増刊 かわらや日記

巫夏希の日常

英雄譚なんて、僕には似合わない。第30話②

「私はそんな柄ではないよ。お前だってそれは知っているだろう?」
 キャビアはそれを聞いてうんうんと頷く。
「それぐらいは知っているぞ。だが、昔から言うでは無いか。女は家庭に入るべきだ、と」
「それは昔の話だ。今は男だって女だって剣を振るい、国のために戦うのが一般論だ。世間もそう認めているでは無いか」
「そりゃあ、」
 キャビアはどこか遠くを眺めて、
「そうだが……」
「そういうわけで、私はこれからも任務を遂行する。……あれがあれば、帝国も力を発揮できる。そうだろう? 正確に言えば、『どのような力をも手に入れる事が出来る』だったか。陛下が何をお望みか分からないが、剣の力を真に使える人間が出現した。そして、それがアントにやってきてくれる。なんと良いことか。かつての人間が使っていた言葉に、『飛んで火に入る夏の虫』なんて言葉があるらしいが、まさにそのこととは思えないかね」
「まあ、今はこの世界に季節なんて概念は存在しないがね……」
「……二千年近く昔の話だったかしら、その戦いにより世界は崩れ、地軸のずれにより季節という概念は失われ……、結果的に、この世界はどうなってしまうのかしらね。とてもいびつな世界になってしまっているわけだけれど?」
「さあな。それを決めるのは俺たちじゃあない。もっと上の立場の人間だろうよ。或いは人間じゃあないかもしれない」
「そもそも私たちに決められる立場の話じゃあないってことね……」
 窓から外を眺めるカラスミ
「あら、雨ね……」
 外は雨が降り出していた。
 それはまるで何かを報せるようにも感じられた――。

 ◇◇◇

 アント国際空港に到着したメアリーたちを待ち構えていたのは、土砂降りの雨だった。
「……最悪ね。まあ、雨雲を突っ切った時点で予想は出来ていたけれど」
「今日はどうするつもりなの?」
 メアリーの言葉にライトニングは尋ねる。
 メアリーは頭を掻いた後、ライトニングたちに答えた。
「え? ああ……ええと、取りあえず先に宿を取りましょう。もう疲れたわ……。一日休むとまでは行かなくとも、今日はここで一泊しましょう」
 国際空港には、たくさんの人間(無論人間以外の存在も居るのだが)が往来するためか、ホテルが併存している。だからそこを上手く利用してしまおうという考えなのだろう。
 問題は、そのホテルに空室が存在しているか、どうかなのだが――。

 ◇◇◇

「いやあ、なんとかなったね。運が良いことに、シングルとはいえ全員分の部屋が確保が出来るとは」
「シングルだからこそ、奇跡に近いわよ。だって、こんなに巨大な空港に一番近いホテルが人数分だけ空室があるなんて、奇跡よ。奇跡」
 取りあえず、今は作戦会議ということでメアリーの部屋に全員が集まっている状態だ。
 メアリーはベッドに地図を広げる。地図は先程ホテルのラウンジで購入したものらしい。
「ここが空港。そして、この都市の中心……その地下に祠はあるわ」
「何故それは確信だと言えるんですか?」
「そりゃあもう。ライトニングから聞き出したに決まっているじゃあない」
「ライトニングが……祠の管理に何か関わっている、と?」
 それを聞いたメアリーはきょとんとした表情で、リニックを見つめる。
「あら? 言っていなかったっけ?」
「……メアリーはいつも言うことが遅くなるの。言うよりも先に行動が出てしまうの。悪い癖なの」
「もう、そんなこと言わないでよ。……ええとね、このライトニングは、というかライトニングって名前じゃあないんだけど。……これについては言ってもいいよね?」
 こくこく、と頷くライトニング。
 というか言った後に事後承諾を得たところで問題ありありなのだが。