英雄譚なんて、僕には似合わない。第29話②
「トロワが爆発した……ですって?」
そして、そのアナウンスを宇宙船の中で知ったメアリーは、思わず崩れ落ちそうになった。
「メアリーさんっ」
「大丈夫、大丈夫よ、リニック。……それにしても、奴ら、そんな強攻策をとってくるなんて思いもしなかった。どうしましょう、きっと剣も手に入っていることでしょう」
「こちらにある剣と、あちらにある剣、そして残りは三つ……。どっちが先に手に入れるか、ですよね」
「決まっているわ、こちらが先に手に入れて、そしてその剣も出来ることなら手に入れたいけれど……」
「総帥、今来ました。この船はアント国際空港へ行き先を変更するようです」
「アント……って、機械文明の?」
「そうね。一番旧時代の色が濃く残っているとも言われている、アント」
「アントには知り合いもいないんですよね……。だからしらみつぶしに探すしか無いと思うのですが」
レイニーの言葉に、メアリーは言った。
「そりゃあ、最初からしらみつぶしに探すつもりよ。……それに、こちらには強力な『眷属』が居る。……ええと、」
「ライトニング、なの」
「そう! ライトニングが居るでしょう?」
今の動作が、少しだけおかしいと思ったのは、リニックだけだった。
だが、問いかけるわけにも、指摘するわけにも、いかなかった。
そこで彼女たちの良い雰囲気を崩すわけにも、いかなかった。
「それじゃあ、次の目的地は、アント。……アント国際空港にはどれくらいで到着するのかしら?」
「ああ、それなら――」
レイニーの言葉をかき消すように、アナウンスが入ってくる。
『……皆様、このたびはご迷惑をおかけして申し訳ございません。トロワの大爆発により、空港への移動が出来なくなりました。その関係上、アント国際空港へ緊急着陸と致します。到着時間は今から五時間後になる見込みです。皆様には大変ご迷惑をおかけ致します』
機械的なアナウンスを聞いたメアリーは頷く。
「あと五時間……。それまでにアントの剣が奪われていなければいいけれど」
そうして、彼女たちの目的地はトロワからアントへと変更することになった。
二つの剣はそれぞれの勢力によって一本ずつ奪われてしまった。
残る『伝説の剣』は、三本。