英雄譚なんて、僕には似合わない。第27話②
「……どうだか。ま、俺たちはあまり考えない方が良いんじゃ無いか。とにかく今は、村長の警護のことだけを考えて……」
「やれやれ、何というか、いつまでもお前達は真面目のようで不真面目な連中じゃのう」
そう言われて、ラムスとピローはそちらを向いた。
そこに居たのは、村長の補佐であるバルダルスだった。
バルダルスは老齢のリザードマンであり、村長よりも年齢が上だ。だから村長になってもおかしくはないのだが、バルダルス自体がそれを嫌悪しており、現在の補佐役に収まっている、というのが噂の範疇で語られている。
バルダルスの話は続く。
「今、親衛隊として働いているお前達を特例で村長の家に入れることとなった。勿論、武器も装備したままで良い。何かあったとき、直ぐに向かえるようにするためだ」
「俺たちを……村長の家に、ですか?」
「どうした、何か問題でもあるか?」
「い、いえ。何でもっ」
「じゃあ、早く入って来なさい。……直ぐに村長の家は閉鎖する。衝撃に備える為だ。学者どもの噂によれば、地震が発生するとも音速の波(ソニツクブーム)が発生するとも言われておる。いずれにせよ、外に親衛隊を放置して置いて、殺すわけにもいかないのが今の状態だ。いいかね」
「わ、分かりました」
ラルスとピローは急いで立ち上がると、踵を返したバルダルスの後をついて行く。
そうして彼らは中に入る。
「失礼します」
ラルスとピローはほぼ同じタイミングで頭を下げると、そのまま中へ入っていく。
かしゃり、かしゃり、と鎧の金属がこすれる音が響く。
「……あの、取りあえず鎧だけ脱いだ方が良いですか?」
ピローの問いに首を傾げるバルダルス。
「何故じゃ?」
「いや……会議とかしている中で、この音を出すのは少々集中が途切れるんじゃないかなーって……」
「特に気にしなくて良いですよ」
そう答えたのはリルーだった。
「……あなたたちは、僕たちに無い力を持っている。そしてその力を使って村長を守っている。それって、立派なことじゃないですか。だから、別に気にすることはありませんよ」
「……リルー」
「……ありがとう。こういうときじゃ無いと、君たちに会えないし、話をすることも出来ない」
リルーは頭を下げる。
「い、いや。君たちは別に何もしていないってわけじゃあないだろう? 僕らには……はっきり言ってしまって、学がない。でも学者になっている君たちはいろいろな作戦を立ててくれている。持ちつ持たれつの関係、とでも言えば良いのかな。そういう風に思えばいいんじゃあないかな」