英雄譚なんて、僕には似合わない。第24話②
「あーあ、あっという間に『剣』を取られてしまったではありませんか、ロマ。あなたが街であれも食べたいこれも食べたいと言っていたから」
「そうだったっけ? 言っていたのは、オール・アイ。あなたの方ではなくて?」
声が、聞こえた。
踵を返すと、祠の入り口には二人の女性が立っていた。
そしてメアリーは目を丸くして、その場に立ち尽くしていた。
「……ロマ・イルファ。あなた……何処に行っていたの……」
「何処に行っていた? 随分なものぐさね。兄を見殺しにしたくせに」
「ち、違う! あれはオリジナルフォーズの攻撃に私たちが敵わなくて……。それはあなただって見ていたはずでしょう!?」
「ま、そんなことどうだっていいんだけれどさ」
メアリーやライトニングを無視するように、祠の奥へと進んでいくロマとオール・アイ。
そしてロマとオール・アイは、リニックと対面した。
リニックの顔をじろじろと見つめて、一言呟く。
「ふうん、君が『剣の適格者』ね。何というか、あいつそっくりで憎たらしい」
「剣に選ばれる者には共通点があると言われていますから、相似するのも致し方ないことでしょう」
「……ふうん。ま、別に良いけれどさ」
踵を返し、祠を出ようとするロマ。
「待って、ロマ・イルファ!」
メアリーの言葉を聞いて、顔をそちらに向ける。
「何?」
「あなたはいったい、剣を求めてなにをするつもりなの……?」
「決まっているわ。あなただって知っているでしょう。お兄様の居ない世界なんて、もう要らない。けれど、お兄様を蘇らせる術を手に入れることが出来る、と分かれば動かないわけがない……」
「剣に齎される全能の力を、使おうというわけね……」
「あなただって、そうしたくて剣を集めているのではなくて? メアリー・ホープキン」
「違う、私は……」
「まあ、いいわ」
再び顔を元に戻すと、祠を出て行くロマ。
「少年、せいぜい剣を集めなさいな。そして、いつかまた私たちと戦う時が来るでしょう。そのときを、どうか忘れないでおいてね。……ええと、名前は」
「リニック。リニック・フィナンス」
「そう。リニック。……覚えておくわ、また会いましょう、リニック」
そして、ロマとオール・アイの姿は消え去った。