英雄譚なんて、僕には似合わない。第23話①
そして、夜。マグーナ基地に潜入するべく準備を酢進めていたメアリーたちは、ライトニングの作り上げたホールにより、基地の奥深くへと入っていた。
……何を言いたいのかさっぱり分からないのかもしれないが、簡単に言ってしまえば、それはリニックにも分からないことだった。
というわけなので。
「……いったい全体、どういうことなんですか?」
「あれ? 言っていなかったっけ、これは異次元を繋ぐホール。だから、どんな場所でも行くことが出来るの。但し距離に限界があるから、今回みたいに基地の外側からじゃあないと、基地に侵入することは敵わないけれどね」
「……最初からそれを使えば良かったんじゃあ?」
「だから距離の限界があると、言ったでしょう」
「実際には、無いの。でも使いすぎると人体に影響を及ぼす……かもしれないの」
さらっと怖いことを言い出すライトニング。
取りあえず中に入ったことは確かなので、ここから『祠』を探すことになる。
「……待っていたわよ、剣の適格者」
しかし、それを待ち構えている人間が居た。
それは女性だった。鎧を装備していた彼女の風貌は、兵士か騎士のそれに近い。
「まさか、待ち構えていたというの? ホールの出現場所を予測して?」
「ホールは、人間の居る場所をうまく避けて察知するはずなの。だから予測することなんて出来ないはずなの……」
「ふん。そんなことはどうだっていい。問題は、お前達のうち誰が適格者かということだ」
「それを言ってどうするつもり?」
「決まっている!」
装備していた剣をぶん! と振り回し、
「本当に剣を使いこなすことが出来るのか……その力を試すのみ!」
そして、彼らに向かって走り出す。
ゴオッッッッッ!!!! と。
まるで赤い閃光が駆け出すように、彼女の身体とリニックの距離は瞬間的にゼロになった。
「なっ……」
「……あんたね。中心に居る人物と言えば、あなたぐらいだもの」
そして。
ドガアアアアッ!!!!
大きな衝撃が走った。
◇◇◇
その衝撃によって、もう間に合わないと思っていた。
土煙によって見えなくなっていた戦闘風景は、その更新を土煙が晴れるまで待機するしかなかった。
そして、土煙が晴れると――そこにはリニックと女性、そしてライトニングが立っていた。
正確に言えば彼女とリニックの間にライトニングが金属バットを装備して、無理矢理中に入り込んだ――とでも言えば良いだろう。