英雄譚なんて、僕には似合わない。第22話①
早々にレストランを後にしたメアリーたちは、車を借りて、基地のそばまでやってきていた。
「そういえば」
「何?」
「一つ疑問があるんですけれど」
「言ってごらんなさい」
「……別の星に移動するにはどうするつもりなんですか?」
「そりゃあ、船を奪うかちゃんとしたやり方で移動するかのいずれかね」
「ちゃんとしたやり方、とは」
メアリーは胸を張って答える。
「そんなことも知らないのかしら? カトル、そしてほかの三つの星とアースは定期便で結ばれているのよ。だからアースみたいにステーションがあって、そこから宇宙の旅に出られるわけ。それを利用するの」
「成程……?」
「それ、絶対分かってない顔よね?」
「分かりました?」
メアリーとリニックの茶番はそこそこにしておくとして、
「……で、話を戻しますけれど」
呆れてしまったのか、溜息を吐いてからレイニーは話し始めた。
「問題はどうやって剣を手に入れるのか。そして、剣を抜いた後に『封印』はどうすべきなのか」
「何言ってんの。破壊するに決まってるわよ。その為に私は命削ってまで眷属と契約までしたんだから」
「眷属……ライトニングのことですか? 正直、彼女を一戦力として考えるのは、」
「言っておくけれど、今回の任務は彼女が居ないと成立しない」
メアリーははっきりと言い放った。
しんと静まり返った空間を見回して、さらに彼女は話を続ける。
「彼女の能力を使うからこそ、私たちは組織として活動出来るといっても過言では無いわ。それに、あなたが思っている以上に彼女は優秀よ。……まさか、そんなことも分からなかったの?」
「分かるわけないじゃないですか。簡単に力量を推し量ることなんて出来やしませんよ。……なら、いいですけれど」
「そうそう。素直に認めるのは良いことね。……話を戻すけれど、ライトニング、あなたの体調は問題ないわね?」
「問題ないの。私の能力を使えなくするような特殊なプロテクトもかかっていないようだし、あっという間にクリア出来るの」
こくこく、と頷いて見せつけるように金属バットをこちらに動かすライトニング。
正直、いつそれを何処から召喚して、また仕舞っているのか分からないし、何故金属バットなのかも分からなかった。
そこの辺りに関しては、正直『理解しなければならない』ところなのだろう。リニックはそんなことを思っていた。