英雄譚なんて、僕には似合わない。第14話③
地下倉庫。
その一つに彼女たちはやってきた。途中出会った団員達にはオール・アイが出歩いていることに物珍しさを感じたがそれ以上の詮索はしてこなかった。
オール・アイははあはあと息を切らしながら、
「……や、やっと着きましたね……。それにしても、こんなにも地下の構造が入り組んでいるとは思いもしませんでしたよ」
「うーん、そうかな? 私はずっとここに暮らしていたからあまり気づかなかったけれど……、それにしてもここもガラクタしか落ちていないわね……」
「めぼしいものは多国籍軍が没収したからではありませんか?」
「うん。それもそうなんだけれど……。あ、このパソコン、使えそう。電源、入るかな?」
「電源を供給するコードがなければ、意味が無いのでは? ……例えば、このような」
「おおっ。流石『全てを見ることの出来る眼』って名乗ってるだけはあるねえ!」
「……そういうことのためにこの力を使うわけではないのですが」
「……コンセントはここにあるし、プラグを差し込めば……。おおっ、着いたよ! 着いた、着いた!」
どうやらこの地下倉庫にも電源は通っているようで、パソコンが起動するのを見て彼女はぴょんぴょんと跳ねて喜んでいた。
オール・アイはそれを微笑ましい様子で見つめていたが、
「パスワード?」
直ぐにその表情は曇ってしまう。
どうやらパソコンにはロックがかかっているようで、パスワードを求められているようだった。
「どうしたのですか?」
「あ、うーん……どうやら誰かが使っていたパソコンらしいのよ。だからパソコンにパスワードがかけられていて。どうすれば解くことが出来るかなあ、って。ねえ、あなたならこのパスワードを『観る』ことって出来ないの?」
「予言の力を何に使おうと……。まあ、出来ない事ではないですが」
「やたっ! じゃあ、よろしくね」
パソコンをオール・アイに手渡し、彼女はさらに捜索を再開する。ロケットがもしあればそれを使おうという算段らしいのだが、ガラクタだらけの場所にそんなものがあるというのだろうか?
そんなことを考えることもしていないように見えるロマを見て、オール・アイは深い溜息を吐く。
しかし、溜息を吐いている暇も無い。
今の彼女にはやらねばならないことがある。
電子機器に対して『観る』力を使ったことはないが、理屈は同じだ。
そう思って、彼女はパソコンの画面に手を当てた。
すると、彼女の視界に文字が浮かび上がる。
それがパスワードであることを理解したオール・アイは、文字を打ち込んでいく。
「……出来ましたよ、開きました」
「ええっ? 早くない?」
オール・アイの言葉を聞いて、大急ぎでそこに戻ってくるロマ。
そしてロマにパソコンを手渡すと、ロマは画面を見て目を丸くしていた。
「何、このパソコン……。デスクトップにファイルが一つしか置かれていない……」
そして、そのファイルのタイトルには、こう書かれていた。
「『人類種保存計画とその遂行プランについて』……?」