英雄譚なんて、僕には似合わない。第14話①
ラグナロク本部。
「恐らく、剣を手に入れるために彼らも行動を移すことでしょう」
オール・アイは、ロマの隣に立っている。それがオール・アイの役割であり、ロマに進言するときは必ずオール・アイもその言葉を聞いていることになる。
オール・アイの話は続く。
「そして、彼らが先に剣を手に入れることで、世界を意のままにすることが出来るでしょう。それだけは避けなくてはなりません。あなたのお兄様を蘇らせるためにも」
「お兄様を、蘇らせるためにも……!」
ロマはすっかりオール・アイの発言には頷くだけの人間となっていた。
それをラグナロクの人間は知っていた。知っていたけれど、強く言えるはずもなく、ロマ自身が強い魔法を放つことの出来る人間である以上、それに逆らうことも出来ないのであった。
「……オール・アイ。あなたは何でも知っているのね。そして、何でも私に提供してくれる。それはどうして? 何故私に協力してくれるの?」
「……それは、世界を救いたいからですよ。前も言ったじゃないですか」
「世界を、救う?」
「そうです。アンダーピースは『平和』を手に入れようとはしていますが、それはあくまでも形だけ。実際は、世界を滅ぼす程の力を手に入れようとしています。そうなってしまえば、世界はどうなってしまうでしょうか? 答えは……火を見るよりも明らかです。私はそれを止めたい。だから、私はあなたに協力しているのですよ、ロマ・イルファ。まあ、それ以上に、もっと思っていることはありますが……」
「思っていること?」
「あなたが兄を思う、その気持ちです」
オール・アイは言葉を紡ぎ続ける。
「あなたが世界をどう思おうとも、兄のことを思い続けているということ。それはとても素晴らしいことだと思った。だから私はあなたに協力したいと思ったのですよ、ロマ・イルファ。あなたが兄を救うこと、それはあなたの使命でもあり私の使命でもある。……って、これは何度も言ったような気がしますけれどね」
「そうだった……かしら。そうだったかもしれないわね。けれど、確認したいことだってあるのよ。何度か確認して、そして、情報を確かなものとする。……それが私にとって一番大切なことなの。それはあなたも理解してくれていたはず、だったけれど?」
オール・アイは何度も頷くと、
「そうですね、そうでございました。忘れていたつもりはありません。けれど、あなたが本当にそのような意志を持ち続けているのかということについて欺瞞を抱きましたものですから、少し確認したかっただけのことです」
「そう。なら良いのだけれど」
「ところで、剣に関してはどうしますか?」
「私たちが行っても良いのだけれど、ロケットを持ち合わせていないのよね……。もしかしたら、このアジトの中に使われていない機体でもあれば良いのだけれど」
「あるのですか? そんなものが」
「リュージュ様が隠し続けてきた『遺産』に近いものよ。正確には、科学技術を隠蔽し続けてこの世界の成長を妨げ続けていた、とでも言えば良いかもしれないけれど」