増刊 かわらや日記

巫夏希の日常

小説感想。「六花〜ローカル食アンソロジー東北編〜」【あまぶん戦利品消化特集】

前回、僕は「イリエ」シリーズの感想を次の記事にすると言いましたが、案外時間がかかりそうなので別の本の感想をやろうと思った。どうも、かんなぎです。

読書の秋にはまだ早いのですが、今日はこちらの作品を。

 

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 「ローカル食アンソロジー」という名前に、かなり惹かれるものを感じます。この作品、実際にはあまぶんの委託にて購入することが出来たものです。6名の方が東北6県のそれぞれの「ローカル食」をテーマに書かれた短編が収録されています。それぞれが短いゆえに、読みやすくてあっさりと読むことが出来ました。

 

一つ一つ、簡単に感想をば。

 

 

 

 

「愛すべき一杯」(けの汁)

なんていうか、「おふくろの味」っていい言葉ですよね。僕のおふくろの味は肉じゃがって、醤油の味がアホみたいに濃いので、肉じゃがだけでご飯が何倍もいけるくらいの味付け(単純に料理が不得意なだけ)なのですが、やっぱりそれって誰が作っても再現できるものではないと思うのですよ。美味しいけど、何か違うよね?そんなことを思い返しながら、読んでいました。ああ、帰って「おふくろの味」が食べたい。

 

 

「ずっとつながる」(ひゅうず)

読んでて何となく想像はできたんですけど、「ひゅうずってなんだ??」ってなった。調べるとなんか餃子に近い見た目だけど、甘いらしい。クルミが嫌いなので、食べられるかどうか微妙なところではあるんだけど、でも食べてみたいなって思いました。ひゅうずによって未来へと受け継がれる家族の絆、というものを感じた。

 

 

 

「だまこ鍋をふたりで」(だまこ鍋)

タイトルだけ見ると、「団子の訛りか何かなのかな?」って思ったんですけど、なんとなく的中しました。

しかしまあ、作ってる風景が目に浮かびますね!

きりたんぽしか知らなかったから、だまこというのはかなり衝撃。そうか、そういうものもあるのか……!

ずっとほんわかーな感じだったけど、中盤「どうなるんだこれ……!」と読むペースが止まらず、エピローグで「あー、いいなあ。こういうのでいいんだよこういうので」ってなった僕であった。料理が繋ぐ愛情(恋)って良いですよね。

 

 

「わたしたちのかたち」(はらこ飯)

まったくどうでも良い話しなんですけど、僕はシャケとイクラが好きなんですよね。

だからはらこ飯というものを知った時は「なんだその海の宝石箱は!」って某レポーターみたいなことを考えたわけですが、未だに食べられてない辛さ。いつか本場のはらこ飯を食べに。

それはさておき、やっぱり子供ってイクラが好きなんだと思うんですよね。だってあの宝石のような輝き!あの粒々!食べた時に弾ける美味しさ!素晴らしさが三拍子揃って最早尊い以外の感情が生まれませんのよ!!

それにしても、「シャケの親子丼イコールはらこ飯」だと思ったけど、違うのかな。いや、そこらへんはまた調べます。とにかく読んでてよだれが出てくる。そんなお話でした。

 

 

「彼女の味」(芋煮)

芋煮会の芋煮って何かめっちゃくちゃ美味そうですよね。一度行ってみたいけど、なかなか機会がなくって。そんなことを思い出しました。

最初はあまり知識がなくて、芋煮って肉じゃがみたいなもんじゃないの〜って思ってたんですけど、ところがどっこいって感じでして。里芋って煮込むと美味いんだよね〜。知ってる人は当然だよ!ぐらいの知識かもしれないけど。

確かに里芋は、というよりも野菜全体が高くなってきましたよね。芋煮に限らず、色々なものを作るのが大変になります。予算的な意味でも。小さい頃はそんなこと思わなかったけれど、今は家事をするようになって身に染みています。そんな他愛もない話をしながら誰かと食事をしたくなる、そんな暖まるお話でした。

 

 

 

「いかにんじん」(いかにんじん)

皆さんはいかにんじんってご存知ですか?文字通り、いか(ゲソ)とにんじんをタレに浸してはい出来上がりの福島県に伝わる郷土料理……今回に限って言えばローカル食、なんですけれど。かんなぎさんの実家は会津の山奥にありまして、いかにんじんが出るんですよ。毎食。

最初は嫌いでしてね、独特な香りみたいな、粘りみたいな、するんですよ。にんじんもいかも好きなんですが、なんでこいつらを組み合わせるとこんなに嫌いになってしまうんだろ、って。

でも、大人になるにつれて美味しく感じてくるんですよね、不思議なことに。今は出ると手を叩いて喜びます。ご飯に乗っけて食べると美味いのよ。是非いかにんじん食べてみて。ほんと美味しいから。

物語は、「レシピの味」に悩んだ主人公が家庭の味イコール母の味を探し求めるお話。そして最後に「引き継いでいく」……。いいですよね、素晴らしいと思います。ああ、美味しいいかにんじんが食べたい。実家に帰ると、おせちと一緒にいかにんじんが出てくるんですよね。是非機会があったら食べてみてください。美味しいよ。

 

 

 

はてさて。

六作品の感想をざっと書いてみました。

書き手それぞれが描く「東北のローカル食」が合間見えて、とても素晴らしいアンソロジーでした。

主催の砂原藍さんと、執筆者の蒼狗さん、雪原歌乃さん、良崎歓さん、梅川ももさん、百画れんかんさん、素晴らしいアンソロジーをありがとうございました。

そして、この「ローカル食アンソロジー」が他地方にも広がることを祈って、筆を置きたいと思います。それでは。