増刊 かわらや日記

巫夏希の日常

ブログ小説『英雄譚なんて、僕には似合わない。』

英雄譚なんて、僕には似合わない。第13話①

ゆっくりと動いていた機体だったが、やがて加速を開始する。それに合わせ、エンジンの音も大きくなっていく。 「……なんか、怖いですね」 リニックがぽつりと呟いたその言葉は、隣に座っていたレイニーに届いていたようだった。 「何よ、リニック。男のくせに…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第12話③

「……詳しいのね」 「いえいえ。これぐらいこのターミナルで働く人間として常識の範囲内ですよ!」 「そう。なら、良いのだけれど」 熱意のこもったリストの答えに対して、メアリーは冷たく遇らう。それはどうかとリニックは思ったのだが、しかしリニックにと…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第12話①

「ロケットは意外と余っているんです。だってそこまで飛空士が育っていないから。けれど、飛空士の大半は早く自分の手でロケットを飛ばしたいと思っていますよ。当然じゃあないですか、ロケットを飛ばすのは男の子のロマンですからね!」 鍵をくるくると回し…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第11話②

口からてを離されて、漸く空気を吸うことが出来た彼はゴホゴホと咳き込む。「怖いなあ、いきなり口を封じられるとは思わなかった……。でも、未だ僕は諦めないよ!」「なんで、我々がロケットを泥棒しようと分かった? それだけを聞かせて貰おうか」「そりゃあ…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第11話①

そして、上層。宇宙ステーション。 難なく到着したメアリーたちは、屹立しているロケットの数々を眺めていた。「本当にこの鉄の塊が宇宙まで飛ぶのかしら……?」「疑問に思っているなら使わなくても良いんだぜ。ほら、転移魔法を使う手もあるじゃないか」「サ…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第10話③

「思い?」 ロマは首を傾げる。「そう。あなたの思いが強かったからこそ、私はともにあろうと思ったのですよ、ロマ様」「……ふうん、よく分からないけれど、あなたのおかげでこの組織はとても大きくなった。本当に感謝しないとね!」 そしてロマは立ち上がる…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第10話②

「楽園教って……確かに、変わったところだな、とは思ったんですけれど」「例えば?」「楽園は必ず存在する、と言って高い物品を買わされるらしいんです。それを持っていると、楽園に必ず行くことが出来るというチケット的な感覚で」「あほくさ。そんなので行…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第10話①

第二章 「宇宙ステーション?」「そ。私たちはロケットを持ち合わせていないからね。結果的に上層にある飛行場からロケットを奪うことになるの」 次の日の朝食。 あの長テーブルで座っているのは、レイニーとライトニング、それにサニーとメアリー、最後にリ…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第9話③

食事とは、いかに今まで自分は違った価値観で得ていた物だと言うことを思い知らされる。「……これ、回収してくれるのかな」 リニックはプレートがやってきた扉を開けて、そこにプレートを仕舞う。 すると機械の動く音がした。どこかにプレートは移動していっ…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第9話②

「……とは言ったものの。やはり気になるのが、」 救世主という存在。 彼を何故救世主と呼ぶのか。そして、それほどの災厄が今後起きるというのか。 それは、きっと今聞いたところで教えてくれそうにないだろう――彼はそう思っていた。 聞かずに後悔するよりも…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第9話①

「ところで、一つ気になるんですけれど」 リニックとレイニーは通路を歩いていた。 通路は迷路の如く張り巡らされており、レイニーの指示が無ければ迷子になってしまう程だった。 レイニーが居なかったら、と思うと少しぞっとしてしまうリニックであったが、…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第8話②

「正確には、宇宙と言うよりはアースの周囲にある星々でしょうね」「?」「管理者はどんなものにも、修正プログラムを用意しておくものです。偉大なる戦いで散った五つの星々にはそれぞれ『鍵』があります。その鍵を使うことで、どんな願いをも叶えることが…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第8話①

「えっ……?」「あなたねえ、さっきから聞いていれば、平和に暮らしたいだの、自分には関係ないだの! そんな関係ないわけないでしょうよ! あなたの生きる世界が、このままだと死滅しようとしているのに、そんな余裕な発言をよく出来るわね!」「ま、まあ、…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第7話②

「そりゃあまあ……栄養がとれていれば良いんじゃないんですか。現に、あれに文句を言っている人間なんて居ないじゃないですか」「違うわ、違うのよ。何を考えているかあなたの考えを聞かせて欲しいけれど……、そんな栄養とエネルギーだけ摂取するような食事で…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第6話②

「でも、結局神は……」「神はこの世界をとっくに見捨てているわ。この成長の見込めない世界をね」 メアリーははっきりと言い放った。 ワイングラスを揺らしつつ、さらに話を続ける。 顔には出ていないが、どうやら酔いつつあるらしい。「要するにね、神は世界…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第6話①

「メアリー・ホープキンってあの……伝説の三人のうちの一人の……!」「そ。知ってるでしょ、それぐらいなら。あんな世界だけれど、救ったのは私たち三人だけ。けれど一番の功績者であるフルは行方不明になり、ルーシーも十年前に亡くなった。今や百年前の出来…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第5話②

「……変なの」「攫ってこいといったのはあなたではありませんか、総帥」「そりゃあそうだけれどさあ……。こんな変わり者だとは思わなかったよ。だからといって捨て置くわけにもいかないしね。やっぱり世界を救う存在って変わり者が多いのかな?」「それだと、…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第5話①

赤ワインを飲み干し、彼女は話を続ける。 クリーム色の髪をした彼女は、長い髪をたなびかせていた。 赤いワンピースに身を包んだ彼女は、彼らがやってきたことを気にも留めず食事をしていた。テーブルの上には、パンと赤ワインとベーコンとブロッコリー。勿…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第4話③

「朝が弱い……ねえ」 リニックは彼の行く先を眺めながら、独りごちる。 「まあまあ、彼と話をするなら、後でいくらでも出来るはずだから。……きっと」「出来ないことは約束しない方が良いの。あなただって知っていると思ったけれど」「ええ、そうですよ、知っ…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第4話②

道をすすむと、突き当たりにさしかかる。 レイニーはそこで立ち止まり、左右を確認しだした。ただの安全確認、というわけでもないだろう。 だとすれば、可能性は一つだけだ。 「……レイニー、さん? まさかその……迷子になったとか言わないですよね?」 リニッ…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第4話①

たどり着いた先にあったのは、小部屋だった。 「小部屋……? いったい、どんな魔法を使えばこんな術が……」「魔法じゃないの。眷属の力なの。言ってしまえば、世界の次元をねじ曲げただけに過ぎないの」「いや、簡単に言っていますけれど、それとんでもなく凄…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第3話②

そんなことを言われても、となってしまうリニック。 しかしその沈黙を許さない現状がある。 爆撃は鳴り止まない。足音が着実にこちらに近づいてきている。 「さあ、どうしますか。どうなさいますかっ。急がないと、私もあなたもランデブー?」「何を言いたい…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第3話①

とは、いったものの。 「……結局、どうやって脱出するんだってかあれはいったいなんなんだなんのためにこの大学を襲った!」 「……五月蝿いですね。質問は一つずつ受け付けますよ。順々に答えていくと、先ず、どうやって脱出するか……ですよね?」 リニックはこ…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第2話②

「へ?」 言われて荷札を確認するリニック。 確かに発送元の情報が何一つ書かれていない。重量もそれなりにあって、はっきり言って不安だ。 「……これ、何ですかいったい?」「こっちが聞きてえぐらいだよ。一応、検査には通っているから問題ないとは思うんだ…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第2話①

「でも、祈祷師の娘だから少しは長命なんじゃあないか、って言われているんですよ」 リニックは持っていたペンをくるくる回しながら、 「でも、やっぱり難しいですかねえ……。本当は、会って話がしたいんですけれど、今は行方不明。生きているかどうかも定か…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第1話②

アースにおける人類居住区は現在八つのブロックで構成されており、そのうちの一つが教育エリアとなっている。教育エリアは文字通り、学校により構成されており、その大半を占めている。残りも学生のための寮であったり、学生のための商業施設であったり、冗…

英雄譚なんて、僕には似合わない。第1話①

ガラムド暦二一二五年。 戦乱が落ち着いてから、おおよそ百年の年月が経過していた。 『赤き血』は、浄化が進められているとは言え、人類の居住区はかつての四割近くに留まっており、正直芳しい状況とは言えていない。 では、元々住んでいる人類はどこへ向か…