増刊 かわらや日記

巫夏希の日常

僕はこうして日産2万字の執筆速度を維持している。2018年度版

こんばんは、巫夏希です。

今回は、ちょっと変わった題材をテーマにしてみたいと思います。

題して、「僕はこうして2万字/日のペースを維持している」です!

タイトルと違う? あー、そこんところはニュアンスで補ってください。

 

んで。

日産2万字って、割と早いペースに思えるのですが、単純計算すると1時間2000字ぐらいになります。大して早くありません。

けれど、これって、睡眠時間とかその他諸々を省くとこうなるのです。

今、僕が執筆に使える時間は11時間あります。

 

けれど、11時間全部を執筆に使うわけではありません。小説を読んだり、マンガを読んだり、ゲームをしたり、ソシャゲをしたり、ニコニコを見たり…いろいろあります。

というわけでその他諸々を省くと大抵6時間です。

6時間で20000字=3334字/時間ということになります。

 

じゃあ、どうやってそのペースを出せるのか、っていうと。

僕は脳内で出しているベースがアニメなんですよね。

 

そういうと、「何言ってんのこいつ?」ってなるんですけれど。

 

つまり、脳内で出てくる創作は「映像」として抽出されているんです。

それ=プロット、シナリオという形で、ノベライズしているに過ぎないんです。

 

例えば、「戦闘シーン」で考えてみると、

炎の魔法がどがーん!と出てくるシーンはそのままどがーん!と擬音を使います

普通は、何とか爆発しているんだよー的な表現を使うと思うのですが。

 

でもそれだけじゃあ、2万字のペースは維持出来ません。

なので僕は15分1000文字執筆法をやっています。

 

これって簡単なことで、

(1)15分書いたら文字数を確認

(2)1000文字より多ければ→今日は調子が良いぞ!

(3)1000文字より少なければ→次のセッションで頑張るぞ!

(4)5分間目を瞑って無を作ります

 

はい! ここが重要です!

20分サイクルのうち、5分間を休憩に費やす。つまり小説のことを一切考えない時間を設けるということですね。

僕はこのサイクルを「セッション」と呼んでいます。意味なんてどーだっていいのだ!

 

セッションをいくつか繰り返すと、1話があっという間にできあがります。3セッションもすれば1話が書けるので、1時間1話といった感じでしょうか。

ちなみに…のりがよければ休憩せずに一気に書き下ろすこともあります。だって、もったいないもん!

 

というわけで、こんな感じでおしまいです。

いかがでしたでしょうか。参考になればこれ幸い。

ちなみにこれ、1000文字ぐらいの文章ですが約15分ぐらいで書き上げました。この場合は、文章が降ってきてますね。おりてこーいおりてこーいと嘆きながら書くときもありますが、それはまあ慣れですね!

 

ではまた!

英雄譚なんて、僕には似合わない。第13話③

「試練を与えし存在……ですか。本当にそんな存在が?」

「もともとシルフェの剣は、幾つかに分かれていたのよ。だからフルは……かつての『勇者』はそれを使いこなせなかった。当然よね、その頃はまだ宇宙に進出出来る力が無かった。オリジナルフォーズを斃すことの出来る力が無かった理由は、そこだった。二千年もの間、エネルギーを蓄積し続けて来たのに。その剣を、私たちは使う手段を知らなかった」

 まるで積もり積もった想いを吐露するかの如く、話し始めた。

「だから、百年前はあんなことを引き起こしてしまった! もしも誰かが一瞬でも、ほんの一瞬でも! 宇宙に目線を向けていたら何か変わったかもしれなかったのに!」

「総帥!」

 そこまで言ったところで、制止したのはサニーだった。

「過去を悔やんで何になる。未来への糧となるというのか? ならないだろう。後悔は意味をなさない。いや、それどころか前進を妨げる害悪だ。そんなものを考えている暇があるなら、前を見てくれ、総帥。あんたは、俺たちのリーダーじゃないか」

 サニーの言葉を聞いて、メアリーは言葉を止める。

 しかし、積もり積もった想いは未だ有り余っているようで、彼女はそのまま泣き出してしまった。

「うわああああああん……!」

「やれやれ、また始まったの。過去なんてどうだっていい、とサニーが言ったばかりなのに」

 ライトニングはそう言うと、メアリーのおでこに触れた。

「いったい何を……」

「見ていれば、分かるの」

 すると、メアリーのおでこから何か黒い靄が出てきた。

 その靄はそのままライトニングの手に吸い込まれていくと、それに染め上げられるように彼女の腕が黒く染まっていく。

「今回は……流石に量が多いの」

「無理するな、ライトニング!」

「良いのよ……、眷属は、この『常闇の女王』は、メアリー・ホープキンに仕えるために存在している。メアリーの痛みを取り除けるならば、この命を賭しても構わないの……」

「だが!」

「…………終わったの」

 そこで、靄の排出が終わった。

 メアリーは泣き止んでいた。そして、ケロっとした表情で、二人を見つめていた。

「……ごめんなさい、また二人に迷惑をかけていたようね……」

「良いの、別に、良いの」

 リニックとリストは何が起きているのかさっぱり分からなかった。

 しかしながら、リニックは何となくであったが、感じていた。

 彼女たちには、普通の『仲間』ではない、何処か歪な関係があるのだということに。

英雄譚なんて、僕には似合わない。第13話②

 その後は何事もなくゆっくりとなっていき、やがて『無重力』となった。

『お待たせいたしました。現時刻をもちまして、自動運転に切り替えさせていただきます。また、シートベルトも解除していただいて構いません。なお、現在は宇宙空間上を飛行しているため、「無重力」状態にあります。ご注意ください』

「無重力?」

「要するに重力が無いんですよ。言ってしまえば、僕たちを地面に縛り付けているエネルギーが重力なんですけれど、それが無いということはどういうことか分かります?」

「馬鹿にしてるの?」

 流石のメアリーもこれには怒り心頭らしく、

「私はこれでもラドーム学院を首席で卒業しているんだからね。まあ、世界を救うために何年か留年したとはいえ」

 鼻高々にそう言うが、現在ラドーム学院は存在しないため、彼女の地位も無いに等しい。

「……まあ、いいわ。つまり、重力が無いってことは、天地がはっきりしないってことでしょう? 要するにふわふわと、」

「あれ? もうシートベルトを外していいとアナウンスしたのに、未だ外されていないんですか?」

 メアリーが言いたかったことの具現化をしに来たかのように、リストがふわふわと浮かびながらこちらにやってきた。

 手すりに捕まらないと制御出来ないためか、手すりに捕まりながらゆっくりとこちらに向かってくる。

「……つまりは、こんな風になるのでしょう?」

「分かってました、それ?」

「五月蝿いわね! ぐちぐち言ってたらモテないわよ」

「いや、そう言うつもりで言ったんじゃないんですけれど……」

 メアリーと話を続けていると怒られてばかりだと実感したリニックは、会話相手をリストにスライドさせていく。

「ところでリスト、自動運転と言っていたが先ずは何処に向かうつもりだ?」

「取り敢えずカトルにしておきましたけれど。ダメなら変えますが」

「いや、それで良いわ。カトルには剣を守るために用意した『盾』が居るから」

「盾?」

「メリア・シールダー。かつて偉大なる戦いでその身を削った『英霊』とも呼べる存在。……そして今は、剣を守りし盾となりて、剣を手に入れようとする者に試練を与える存在よ」

英雄譚なんて、僕には似合わない。第13話①

 ゆっくりと動いていた機体だったが、やがて加速を開始する。それに合わせ、エンジンの音も大きくなっていく。

「……なんか、怖いですね」

 リニックがぽつりと呟いたその言葉は、隣に座っていたレイニーに届いていたようだった。

「何よ、リニック。男のくせに、我慢強くないのね?」

「そういう、君は怖くないのか?」

 レイニーはそれを聞いて、首を横に振った。

「私は怖くないわ! この日に備えて色々と特訓を積んできたんだものね!」

 同時にぼん! と何かが弾ける音がする。

 それを聞いた彼女はきゃあ! と声を上げた。

「特訓が、何だって?」

 ニヤニヤしながら彼女を見つめるリニック。

 それに対してレイニーは未だ意地を張っているようで、

「う、五月蝿いわね! 私だって経験したことのない事象ですもの! 少しぐらい怖がることもあるわよっ」

「でも、さっきは『怖くない』って」

「それはそれ! これはこれ!」

 はっきり言って、理不尽極まりなかった。

 さっきの爆発音はどうやらエンジンの音だったらしい。そして、その音はさらに激しさを増していく。

 その激しさと共に揺れも大きくなっていった。ロケット(もうこの際ロケットだかスペースシャトルだかどうだっていいが、とにかく便宜上こう呼ぶとして)に乗ったことのないアンダーピースの面々はその振動を身体で実感していた。

 そして、最後にふわりと浮かんだ感覚があった。

『ご乗車の皆様に、ご連絡します。当機は離陸しましてこれから大気圏外に出ます。しばらく揺れが続くため、シートベルトはまだ締めていただきますようお願い致します』

「た、大気圏?」

「アースの周りに空気があるじゃないですか。その空気を閉じ込めておくための膜ですね。オゾンという物質で覆われていると聞いたことがありますが……」

 メアリーの言葉にリニックは答える。流石は大学生だけのことはある。知識だけは誰にも負けないようだった。

 それを聞いたメアリーはふうん、と聞いているんだか聞いていないんだか分からないような声を上げて、

「でも、その膜に穴を開けたら空気が漏れ出るのではなくて?」

「……オゾンも気体なんですよ。だから、膜と言っても気体の膜なので、仮に僕たちが乗る船が穴を開けたとしても直ぐに復活するんですよ」

「……へえ。まだまだ不思議なことがあるのねえ……。百年以上生きているけれど、初めて知ったわよ、そんなこと」

 

英雄譚なんて、僕には似合わない。第12話③

「……詳しいのね」

「いえいえ。これぐらいこのターミナルで働く人間として常識の範囲内ですよ!」

「そう。なら、良いのだけれど」

 熱意のこもったリストの答えに対して、メアリーは冷たく遇らう。それはどうかとリニックは思ったのだが、しかしリニックにとってみれば自分の得意分野を全く興味のない人間に話したら、それはそれで同じ反応を取られる(軽く遇らわれるか無視される)ことだろう。

 メアリーは早速椅子に腰掛け、シートベルトを締める。早く出せとでも言いたいのだろうか、リストに熱い視線を送っている。

 そしてリストもそれを理解したのか、渋々操縦席へと向かっていった。

 リニックたちは椅子に腰掛けたままだったため、そのままシートベルトを締めることとなった。かちゃり、と金属音がすることを確認し、外れないことを何度もシートベルトを引っ張って確認する。

「……これで良いのかしら? 初めてのことだからワクワクが止まらないわ。あー、長生きしてて良かった!」

 その発言は彼女の容姿からすると不適当なようにも思えるが、しかしそう見えても百歳を優に超えているため、その発言は適当であると言えるだろう。

『ご乗車の皆様、まもなく本船は離陸準備に入ります。シートベルトの着用をもう一度ご確認下さい。……シートベルトの着用を、もう一度ご確認下さい』

 そして、ゆっくりと船が動き出す。窓はついていないため、外の景色を窺い知ることは出来ない。しかし、今から飛び出すのだということに関しては誰もが緊張しているようで、軽口を叩いていたサニーですらシートベルトをがっしりと握り、何も言わずに目を瞑っていた。案外こういうことが苦手なのかもしれない。

 そして、メアリーたちを乗せた船は、無事アースを離陸するのだった。

英雄譚なんて、僕には似合わない。第12話②

「それにしても……、なんというか豪華よね……」

 メアリーの言葉に同意しない者は居なかった。

「確かに、もう少し質素なものを想像していましたよ。あるものはトイレだけ、みたいな」

 中に入ってみると、キッチン(しかも冷蔵庫まで完備されている)にトイレ、シャワーまでついている。ベッドも充分な数用意されており、一種のホテルに近い感覚だった。

 とにかくアンダーピースの面々は何処かで休みたかったので、キッチンの隣にあるリビングスペースに集まることにした。六人分の椅子と、テーブルが置かれている。彼らはそれぞれ椅子に腰掛けた。

「……あとはリストが許可を貰ってくるのを待つだけね」

「でも、そんな簡単に許可がおりるのか?」

「サニー、私に聞かれても分からないわよ。それとも、何か分かると思ってその質問をしたのかしら?」

「……いいや、そういうわけでは無いが」

「なら、宜しい。彼は悪気が無いように見えたわ。それに、明確な目標を持っている。だから彼を利用するしか無いのよ。win-winの関係、とは言ったでしょう? まあ、はっきり言って純粋無垢な少年の感情を利用するのはどうかと思うけれどね……」

「お待たせしました!」

 リストがやってきたのは、メアリーの言葉に全員が感慨に耽っている、そんなタイミングでのことだった。

「……あ、あれ? どうかしましたか?」

 リストは直ぐに違和感に気付き、メアリーたちに問いかける。

 メアリーはなんでも無いわ、と代表して答え、さらに話を続けた。

「ところでリスト、その様子だと『試験飛行』の許可は貰えたのかしら?」

「ええ。なんとか下りましたよ! 月までの飛行と言われましたが、そんなの全然無視しちゃっていいですよね?」

「ええ。最悪あなたが悪くならないように何とかこっちでフォローするわ。……それじゃあ、私たちは操縦席に向かえばいいのかしら?」

「いえ、その必要はありません。重力場操作システムが作動する最新型なので、離陸時と着陸時のみシートベルトをして貰えれば! ほら、ちょうど皆さんが座っている椅子にもシートベルトがついているでしょう? 因みにその椅子もスライド式で、ある一定の場所までしか動かないようになっているんですよ。……気付きました?」

英雄譚なんて、僕には似合わない。第12話①

「ロケットは意外と余っているんです。だってそこまで飛空士が育っていないから。けれど、飛空士の大半は早く自分の手でロケットを飛ばしたいと思っていますよ。当然じゃあないですか、ロケットを飛ばすのは男の子のロマンですからね!」
 鍵をくるくると回しながら、リストは歩いていた。
 そして彼を先頭にしてアンダーピースの面々はロケット試験場と呼ばれる場所を歩いていた。
「な、なあ。流石に盗むとはいえ、こんな堂々としていていいのか? 直ぐにばれそうな気がするけれど……」
「僕はここのメイン整備士を任されていますからね! 安心ですよ。流石に、僕が誰かを連れ込もうなんてことは誰も思いませんでしょうし、思っても新入りの研修か何かと思うでしょうね。というかそういう風に取り繕うのでそう考えていてください」
「というか。意外と図太い製革しているわね、あなた。まあ、別に良いのだけれど」
 メアリーは流石に彼の図太い性格に目を見張るようになったようで、同格の立ち位置で彼を見ている。もうとっくに彼はアンダーピースのメンバーの一人となったようだった。
 リストは一機のロケットを見ると、それを指さした。
「これにしましょう。ちょうど鍵も持っていますし」
「これを使うの?」
 それは戦闘機のような、飛行機のような、そんな形をしていた。
「……これを使うのね?」
「ええ、そうですよ。ってかなんで二回聞いたんですか」
「ちょっと気になったのと、あなたの反応速度が遅かったから」
「……だって今からこれを操縦出来ると思うと、胸が高鳴りまして! だってそうじゃないですか、この『スペースシャトル』のかっこよさ! あ、名前はそう言うんですけれど、『宇宙列車』という意味でスペースシャトルという名前をつけられたらしいんですけれど、普通の飛行機やロケットとは違って、大勢の人間を運ぶことが出来るような仕組みが組み込まれているロケットなのですよ! 何でもプロトタイプはかつてスノーフォグが旧文明の資料を集めたことから始まったらしいのですけれど、それによって今、この現代に復活するって素晴らしいですよねっ! 素晴らしい、素晴らしいでしょう!?」
「……ああ、ええ、そうね」
 何かめんどくさい相手を仲間にしてしまった、と今更ながら後悔するメアリー。
 リストは慣れた手つきで扉を開けると、中へ皆を案内する。
「どうぞ、中へ。取りあえず試験飛行という名目で今から申請してくるので、中で待っていてください。鍵は閉めるので、絶対に開けないでくださいね。あと、外から見られる可能性も高いので、操縦席にも行かないでください。では、また!」
 早々に話を切り上げて、さっさとリストは外へ出て行ってしまった。
 残されたメアリーたちアンダーピースの面々は、取りあえず中を探索することにした。

 

英雄譚なんて、僕には似合わない。第11話②

 口からてを離されて、漸く空気を吸うことが出来た彼はゴホゴホと咳き込む。
「怖いなあ、いきなり口を封じられるとは思わなかった……。でも、未だ僕は諦めないよ!」
「なんで、我々がロケットを泥棒しようと分かった? それだけを聞かせて貰おうか」
「そりゃあ、目つきが違うもの。普通なら旅行に目を輝かせる人が多いのだけれど、あなたたちはロケットばかりを見ていた。そういう人はロケットオタクかロケット泥棒かのどちらか。ま、誰も気づいていないようだから、安心して。もし殺すなら……今のうちだけれど」
「あなた、殺されるためにわざわざここにやってきたの? だとしたら滑稽ね」
「そんなまさか。……僕は賭けのためにここに来たんです。運が良ければ僕の勝ち、ってね」
「賭け?」
 メアリーは一歩近づき、少年の顔を見つめる。
 その顔はどこかで見たことのあるような――或いは似たような顔つきをしていた。
 少年の話は続く。
「僕は飛空士だ。だけれど、ベテランのバーターに回されるのがいつもの僕だから、だから、僕が主導で空を飛びたかった。宇宙に行きたかった」
「だから、ロケットを奪う人間を探していた、と……。もしその人間なら、そのまま宇宙に行くのではないか、そしてもしかしたら飛空士も一緒に探しているのではないか、と」
 こくり、と少年は頷く。
「だとしてもだめね。あなたが何を考えているのか、私たちには分からない。もしかしたらスパイかもしれないし、或いはアースから逃げ出したいだけなのかもしれない。……ねえ、あなた、本当は何か別の理由があるのではなくて? 宇宙に出ないと行けない理由が」
「あります。行かないと行けない理由が……」
「何? それは。言える範囲で構わないわ。教えてくれないかしら。それによって、私はあなたを連れて行くかどうか判断する」
「……父さんを探したいんです」
「父さん?」
 メアリーの言葉に少年は頷く。
 そして、少年は首にかけられていたペンダントを外して、メアリーに差し出した。
 ペンダントはロケット型のペンダントであり、そこを開ける。
 するとそこに一枚の写真が入っていた。二人の男性が笑みを浮かべている様子だ。そのうち若いほうは、恐らく少年だろう。では、もう一人が――。
「お父さんと、仲が良かったのね」
「ええ」
「でもお父さんはある日、ロケットの試験運転でカトルに向かって……そのまま行方不明になってしまいました。噂だとそのロケットはカトルで墜落した、とも言われていますけれど……。父さんがそう簡単に死ぬとは思えないんです。だから、」
「だから、探しに行きたい、と……。それが本音ね」
「はい。さっきのロケットの件も嘘じゃありません。けれど、父さんを探したいということも本当なんです。けれど、このご時世、自分でロケットを持つことも出来ないし、カトルに旅行に行くことも出来やしない……」
「カトルは帝国を作っているからね。そう簡単に入国を認めてくれないでしょう。友好条約だって、形だけのものだし」
「ええ。だから……だから、自分一人で向かうことが出来ないんです」
 カトル帝国と言えば、ロボットによる発展が見込まれている帝国だ。ロボット産業を得たいアースからして、友好条約を結ぶに適当と判断したのか、数年前から友好条約を締結している。しかし、それはメアリーの言うとおり、形だけのもので、帝国とはいつ戦争が始まってもおかしくはない状態だった。
 だから、それを気にしているのだろう。それを気にしているからこそ、カトルへの旅行プランがあるとしてもそこに自由行動は存在せず、すべてが旅行会社の決められたプランに沿った行動であることは確かだ。抜け出して見に行くことも出来なくはないだろうが、見つかった瞬間に殺される。はっきり言って、とても一人で行うことではない。
「まあ、カトルには私たちも用事がある。ついでに探してみるのもアリだとは思うが……」
「彼を連れていくんですか、総帥!」
 直ぐに否定したのはレイニーだった。
 彼女は危険な行動はあまりするべきではないと判断していたのだろう。だから、だからこそ、今回の行動には否定的だった。
 しかし、彼は飛空士である。それだけでも一緒についていくには十分過ぎる材料だ。若干のマイナスがあったところで、そんなことはどうだっていい――メアリーはそういう結論を導いたのだろう。
「確かにあなたの不満も分かる。けれど、彼は飛空士。私たちは飛空士が欲しかった。Win-Winの関係になるとは思わないかしら?」
「それはそうですけれど……」
「僕が仲間になれば、空いているロケットをそのまま使えますよ! 何せ今鍵を持ち合わせていますからねっ」
 にひひ、と笑みを浮かべて鍵を見せつける少年。
 それを見たメアリーは、仲間にするのに十分と判断したのだろう、大きく頷くと、
「分かったわ。あなた、名前は?」
「僕の名前はリスト。リスト・フォーミュラです」
 そして、アンダーピースに新たな仲間が加わるのだった。

 

英雄譚なんて、僕には似合わない。第11話①

 そして、上層。宇宙ステーション。
 難なく到着したメアリーたちは、屹立しているロケットの数々を眺めていた。
「本当にこの鉄の塊が宇宙まで飛ぶのかしら……?」
「疑問に思っているなら使わなくても良いんだぜ。ほら、転移魔法を使う手もあるじゃないか」
「サニー。転移魔法はね、もう片方に魔方陣がないと成立しない不完全な魔法よ。仮に運良く誰が転移魔法を作り出していたとしても、魔方陣を解析することは不可能に近いわ」
「へいへい。知っていますよ。それくらい常識の範囲内ですよ」
「呆れた。あなた知っているのにわざとその質問をしたのね?」
 メアリーは頬を膨らませる。何だかその様子が小動物のようでとてもかわいらしい。
「……まあ、とにかくロケットの一つを奪うとしても、どうしましょうか……。問題は、飛行士も一緒に来て貰う必要があるのよね」
「飛行士がいないんですか?」
 リニックの言葉に、メアリーは余所余所しく頷く。
「……残念ながらね。そこまでは集め切れていないというか。まあ、何とか現地調達でなるかなあとは思っているのだけれど。リニック、あなたは流石に飛空士の免許を持っては……居ないわよねえ」
「残念ながら。というか普通はロケットの操縦なんてしませんから」
「そうよねえ……となると、やっぱり飛空士を誘拐しないと話にならないということよね」
「ロケットに運良く飛空士が居ればそいつを脅せば良いんですけれどね」
 けろっとした表情でとんでもないことを言うレイニー。
 彼女もこの組織の経験が長いらしく、普通にそんなアイディアが浮かんでくるらしい。
 そして、彼女たちは吟味するようにじろじろと眺めながら、ロケットの隙間を歩いて行く。
「あの、少し宜しいでしょうか」
 声をかけられたのはリニックだった。
「……はい? どうしましたか?」
 もしかして、怪しまれたのだろうか――なんてことを考えていたが、直ぐにそれは杞憂であると思い知らされる。
「もしかして、ロケットを泥棒しようと思っていますかっ?」
 目をキラキラと輝かせて、彼はそんなことを大声で言い出した。
 急いでレイニーが口を塞ぎ、手に持っていた拳銃を彼の頭に当てる。
「……何処まで知っている? それを本部に知らせて、私たちを捕まえるつもりか。それとも、ラグナロクの仲間か?」
 レイニーの言葉は、重く、冷たく、そして的確だった。
 しかし、彼はずっと首を横に振るだけだった。涙を流していたが、レイニーにはそんなこと虚仮威し程度にしか思わなかったのだろう。

 

英雄譚なんて、僕には似合わない。第10話③

「思い?」
 ロマは首を傾げる。
「そう。あなたの思いが強かったからこそ、私はともにあろうと思ったのですよ、ロマ様」
「……ふうん、よく分からないけれど、あなたのおかげでこの組織はとても大きくなった。本当に感謝しないとね!」
 そしてロマは立ち上がると、慌てて外へ出て行った。
 残されたオール・アイはぽつりと呟く。
「……小娘が。何も知らない小娘が。ただただ『希望』に縋って生きているだけの小娘が。そんなことで生きていけるとでも思っているのか。そんなことで生きていこうと思えるのか。馬鹿馬鹿しい、世界は終わりに満ちていて、世界は崩壊への一途を辿っていようとしている。楽園教だって同じだ。そんなものに縋って何になるという。この世界は百年前にとっくに『終わっていた』世界だったのに、彼奴らが無理矢理に寿命を引き延ばした。今や延命治療の世界と言えるだろうに。……まあ、そんなことを言ったところで、人間どもは無理矢理この世界で生きていこうと思うのだろうがね」
 オール・アイは一口スープを啜った。
「このスープだって、そうだ。本当はもう『生物の生命を食べる』という行為すら出来ない動物なのだ。ならば世界はさっさと滅んでしまった方が良い。そのためにも、彼女たちは有効活用せねばなるまい。そう、ラグナロク……かつての古い言葉で『最終決戦』とも言われたその言葉、存分に活用させて貰うぞ」
 その言葉は、誰にも聞こえるはずがない。
 誰も居ない一人の部屋で、彼女がぽつりと呟いた闇。
 その言葉の真意を、第三者が知ることになるのは、かなり後の話となる。